白と黒の世界
黒は死に畏怖する世界。
常に死と隣り合わせの、そして口の中が錆び付くような、自分自身が散り散りになるような。
白は死後の世界。
この白い世界はどこまでも果てしなく、また現実味がなく、しかし確実に死を感じる。
二つの世界は、一つに等しく、それは黒が線に対して、白は点の存在。
生まれて間も無く私が感じたこの世界観は、私が頂いた時間が伸縮して一定でない事を教えてくれる。
白と黒の世界を味わうと、また様々な色の世界を感じる。
喜びを感じ、幸せを感じる。
さらに時間が伸縮して、思い出も細く太く、心も糸のように、繊細で、しかし強く。
生きながらにして、私はこの感覚をたまに味わうことで、
霧のような自分の人生を愛おしく思う。
消えることのない、私の実体。

コロナになり、ずっと訪れていなかった場所があります。私にとって、「白と黒の世界」を感じさせてくれる、とても重要な場所です。今回、四年ぶりにその地を訪れました。私は普段、「外に答えを求めず、既に自分は全てを持っている。既に在る。」事を大切にしているので、外に答えがあると思う事はありません。がしかし、この地は、人間に必要なある感覚を思い出させてくれます。
その地に足を踏み込むと、一人で自然に放り出され、道なき道を進み、死後の世界を感じるような尊い世界を進み、そうすると、生きているうちにしたい事、大切にしている事、会っておきたい人などを感じる事ができます。
そうして、僕の人生が儚いものだと感じた時、ただただ欲のない、ふっと消えゆくような漂うような、しかし、しっかりとした心ある音が奏でられるように感じるのです。
ただ、消えゆく霧のように。
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